「障害年金」は、私たちが病気やケガなどによって障害の状態になったとき、生活を支えるものとして支給されます。
「障害の状態」とは、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの障害だけでなく、がんや糖尿病、高血圧、呼吸器疾患などの内部疾患により、長期療養が必要で、仕事や生活が著しく制限を受ける状態になったときなども含まれます。また、障害手帳を持っていない場合でも、障害年金を受けることができます。
しかし、権利があるのに受給していない人が多く、障害年金の受給率は低いのが現状です。
なぜ受給率が低いのでしょうか??
障害基礎年金額 (初診日に国民年金加入の方)障害年金の受給率が低い理由
・障害者は自分が申請に行けない程の状態の人が多い。
・障害年金の手続きが複雑で専門的な知識も必要とする。
・医学知識も必要とする。
・障害年金の内容を知らない。肢体不自由のイメージが強く、いろいろな疾病でも受給できる事を知らない。
・障害年金自体を知らない。
・受給申請が遅れて事実の確認が困難で諦めてしまった。*初診日、障害認定日の症状など。
以上の理由が考えられます。
障害基礎年金額 (初診日に国民年金加入の方)
【1級】
777.800円×1.25(=972,250)+子の加算
【2級】
777.800円+子の加算
<子の加算> 第1子・第2子 各223,800円
第3子以降 各74,600円
※子とは次の者に限る
18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
20歳未満で障害等級1級または2級の障害者
障害厚生年金額
(初診日に厚生年金加入の方)
【1級】(報酬比例の年金額)×1.25+配偶者の加給年金額(223,800円)+基礎年金
【2級】(報酬比例の年金額)+配偶者の加給金額(223,800円)+基礎年金
【3級】(報酬比例の年金額) ※最低保証額 583,400円
≪報酬比例年金額の計算≫
{(平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月以前の被保険者月数)
+(平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以降の被保険者月数)}
※被保険者期間が、300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金額計算の基礎とはされません。
障害手当金
・厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。
・障害の原因となった病気やけがが初診日から5年以内に治り(症状が固定し)、その治った日に障害厚生年金を受けるよりも軽い障害の状態であって、障害の程度が障害等級表に定める程度であること。
・保険料の納付要件を満たしていること。
障害手当金の金額
報酬比例の年金額×2倍
1,170,200円に満たない時は、1,170,200円。
障害年金の3つの受給要件
制度加入要件
・初診日に、年金制度(国民年金・厚生年金保険など)のいずれかに加入している必要がある。
・これに当てはまらない場合でも、初診日に20歳未満か、または60歳以上65歳未満であるとき(ただし、住所が日本国内にある時に限る)は国民年金に加入していたのと同じ扱いになる。
保険料納付要件
①初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの年金加入月数の3分の2以上が、保険料納付済みまたは、免除されている月であるとき
<解説>
被保険者期間は、20歳から初診日の属する月の前々月(平成26年7月)までの15月です。
このうち、保険料納付済期間および保険料免除期間は13月です。
よって、保険料納付済期間および保険料免除期間が3分の2以上(10月以上)あるので納付要件は満たしています。
上記①に該当しない場合でも、初診日が平成38年4月1日前であって、初診日に65歳未満の場合は、初診日の前日に、
②初診日の属する月の前々月までの直近の1年間に、保険料の未納期間がなればよいことになっています。
<解説>
初診日の属する月の前々月までの1年間(平成25年8月から平成26年7月まで)に未納期間がないので納付要件は満たしています。
※初診日が平成3年5月1日前の場合は、納付要件が異なりますので、年金事務所にご相談ください。
**注意**
保険料納付要件は、よく確認が必要!!
・年金履歴には保険料の納付日が記述されていません。納付要件を確認する時には、『納付日』を確認!
・統合失調症等で20歳前後の発症では、保険料納付要件が問われることが多い。未納の時は20歳以前に初診がないかを要確認!
障害程度要件
・障害等級の重い方から1級、2級、3級と定められている。
・初診日が国民年金では、1級か2級のみ。
障害の程度が、障害等級に障害認定日以降に該当することによって障害年金が受給できる。厚生年金保険では、1級から3級までの等級のどれかに該当すると年金が受給できる。3級に達しないときでも、障害手当金(治癒が前提)に該当すると一時金が支給される。
初診日とは?
障害の原因となった傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日
初診日は「傷病の初診日」、どの「病院の初診日」でもいいわけではなく、これが障害年金の本当の初診日だ、と言えるためには、「前の病院」があってはならない。
また初診日は、原則として年月日まで判っていなければならない。
初診日の証明
証明書類としては、医師・歯科医師が作成する診断書等の証明書(医証)がもっとも有効とされる。
ところが、診療録いわゆるカルテの保存期間は5年。カルテの保存期限が切れて破棄されている事がある。初診日から長い年月が経っていればいるほど、その証明が難しくなる。
しかしカルテ以外でも初診日を証明できる場合がある。
- 身体障害者手帳
- 前記手帳作成時の診断書
- 交通事故証明
- 労災の事故証明
- 事業所の健康診断記録
- インフォームド・コンセント等による医療情報サマリー
障害認定日
障害の程度を定める日のことで、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から起算して1年6ヵ月を経過した日、または1年6ヵ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日をいいます。
障害年金の請求
障害認定日による請求
障害認定日に法令に定める障害の状態にあるときは、障害認定日の翌月から年金が受けられます(ただし、一定の資格期間が必要です)。このことを「障害認定日による請求」といいます。
<解説>
初診日が平成25年4月25日のため、障害認定日は1年6カ月経過した日である平成26年10月25日となります。障害認定日の症状が法令に定める障害の状態にあれば、障害認定日以降に障害年金を請求することで、平成26年11月分から受け取れます。
事後重症による請求
障害認定日に法令に定める障害の状態に該当しなかった人でも、その後病状が悪化し、法令に定める障害の状態になったときは請求日(請求は65歳に達する日の前日まで)の翌月から障害年金が受けられます(ただし、一定の資格期間が必要です)。このことを「事後重症による請求」といいます。事後重症による請求の場合、請求が遅くなると、受け取りが遅くなります。
<解説>
初診日は平成22年10月に初めて病院に行った日です。障害認定日のときは、症状が軽かったので、障害年金には該当しませんでした。しかし、平成26年10月18日から人工透析(2級相当)を開始したため、人工透析開始日以降に障害年金を請求することで
事後重症による障害年金を請求日の翌月分から受け取れます。
障害年金の請求に必要な主な書類
診断書
診断書は、障害の内容によって、8種類に分かれています。通常は1種類の診断書でいいのですが、いろいろな傷病を併発している場合は2種類・3種類の診断書を作成する必要がでてきます。
診断書の内容としては、治療経過・各種検査データ・臨床所見などが中心ですが、その他に、日常生活動作・生活能力・一般状態・労働能力などの、本人でなければ把握できない項目も含まれています。
診断書は医師にしか作成することができませんが、日常生活の様子などは本人に確認しなければ書くことができません。つねに主治医とコミュニケーションしっかりとって、普段の生活の様子をきちんと伝えることが重要です。
障害年金の成否の大部分は診断書で決まりますので、作成の全てを多忙な医師任せにしてしまうことは危険です。
病歴・就労状況等申立書(病歴状況等申立書)
病歴・就労状況等申立書(申立書)は、請求者が発病から初診日までの経過、現在までの受診状況および就労状況等について記載する書類です。
請求者側が自ら作成して申告できる唯一の参考資料であり、自分の障害状態を自己評価して行政にアピールできるのは、この申立書以外にないので、できるだけ具体的に、発病から現在までの病状・治療の流れ、日常生活の様子が目に見えるように作成する必要があります。
しかし診断書との整合性が必ず求められますので、細心の注意が必要です。たとえば、診断書の内容が2級相当なのに、1級相当の申立書を書いたらその内容が疑われてしまいます。また、3級相当の申立書を書いたらせっかく診断書が2級相当なのに3級と認定されてしまう可能性もあります。2級相当の診断書に対しては、しっかりと2級の内容の申立書を作成しなければなりません。
受診状況等証明書
受診状況等証明書は、診断書作成医療機関と初診時の医療機関が異なっている場合に、初診時の医療機関で取得していただく証明書類で、よく「初診日証明」とも言われます。
ただし、医師法によってカルテの保存期間は5年となっていますので、初診時の医療機関が5年以上前だったり、初診の医療機関が廃院していた場合は、受診状況等証明書が取れない場合もあります。その場合は「受診状況等証明書が添付できない理由書」付けて提出します。
請求者が初診日から継続して同一の医療機関で受診されている場合は、提出された診断書によって初診日における医師の証明が確認できますので必要ありません。
障害年金裁定請求書
障害年金裁定請求書は、請求者の氏名や住所、配偶者や子などのデータ、その他請求にあたっての基本事項を記入する書類で、障害年金の請求は、この障害年金裁定請求書に診断書などの必要な書類を添付して行います。
障害年金裁定請求書は「障害基礎年金」用と「障害厚生年金」用とに分かれます。両者の違いは、障害厚生年金では2級以上の場合配偶者加給年金が支給されますので、配偶者に関する詳しい情報を記載するようになっています。
その他添付書類
戸籍謄本
住民票
預金通帳コピー
等ですが、既婚者、子供の有無によって添付書類は異なってきます。