障害年金の基礎知識

広汎性発達障害で障害年金を申請する条件やポイントを社労士が解説

広汎性発達障害(ASD)を抱える人々は、仕事での困難さや社会的な適応に向き合う際にさまざまな課題に直面しています。

この記事では、障害年金の概要や手続き、広汎性発達障害者が障害年金を受けながら働くための具体的な方法について詳しく解説していきます。
また、仕事との調和を図るための支援制度や具体的なヒントとアドバイスも提供します。

広汎性発達障害を抱える人々やその家族は、障害年金を利用することで仕事との調和を図りながら充実した生活を送ることが可能になるかもしれません。

こちらの記事でわかること

広汎性発達障害とは?詳しく解説

広汎性発達障害(Autism Spectrum Disorder, ASD)は、神経発達の障害であり、個人のコミュニケーション能力や社会的相互作用、興味・行動の特徴に影響を及ぼします。
広汎性発達障害を抱える成人の方の特徴としては、業務の処理手順などに対して強い執着心を持ったり、同じパターンの行動(常同行動)にこだわることが多い傾向が見られます。
そのため、予想外の依頼が入った際には、手順や計画が乱れることで、不安やパニック状態に陥る可能性があります。

以下では、広汎性発達障害の特徴と症状の概要について説明します。

広汎性発達障害の特徴と症状の概要

広汎性発達障害は、多様な特徴を持つスペクトラム障害であり、以下のような症状が見られることがあります。

社会的相互作用の困難

広汎性発達障害者は、他者とのコミュニケーションや社会的な相互作用に困難を抱えることがあります。
表情や身振り、声のトーンなどの非言語的なサインの理解が難しいことがあります。

コミュニケーションの課題

言語的なコミュニケーションにも困難があります。一部の人では、遅延した言語習得や限られた関心ごとに特化した話題の傾向が見られることがあります。

利益や行動の独特な特徴

広汎性発達障害者は、独自の興味や関心ごとを持ち、ルーティンや習慣にこだわる傾向があります。また、感覚的な処理においても特異な反応や過敏さが見られることがあります。

広汎性発達障害とADHDの違いとは?

広汎性発達障害(ASD)と注意欠如多動性障害(ADHD)は、両方とも神経発達に関連する障害ですが、いくつかの違いがあります。

広汎性発達障害(ASD)

主に社会的な相互作用やコミュニケーションの困難さが特徴です。
人との関わり方や感情の理解が難しいことや興味や関心の幅が限定されることがあります。
また特定のものに強い執着心を持つことがあります。
他にも様々な行動パターンや習慣が見られ、一貫性を持った繰り返し行動(常同行動)が現れることがあります。

注意欠如多動性障害(ADHD)

注意力や集中力、衝動のコントロールに困難が見られる特徴で、注意散漫や多動、長時間のタスクに対する集中が困難、計画的な行動や組織化にも苦労することがあります。
また、衝動的な行動や即興的な判断が多く、そのために日常生活で問題を引き起こすことがあります。

要するに、広汎性発達障害は主に社会的な相互作用やコミュニケーションに関する困難が中心であり、興味の幅が狭い傾向があります。一方、ADHDは主に注意力や衝動のコントロールに問題があり、行動の組織化や計画立てが難しい傾向があります。

仕事での困難さと広汎性発達障害の関係


広汎性発達障害を持つ人々は、仕事での困難さに直面することがあります。
以下に、その関係性の一部を紹介します。

コミュニケーションの障害


広汎性発達障害者は、仕事上でのコミュニケーションに困難を抱えることがあります。言語や非言語的なサインの理解や適切な表現方法の認識に難しさを感じることがあります。

ルーティンと柔軟性の調整


広汎性発達障害者は、ルーティンや習慣にこだわる傾向があります。仕事では、柔軟性が求められる状況や変化への適応に苦労することがあります。

過刺激への感受性


広汎性発達障害者は、環境の刺激に対して過敏な反応を示すことがあります。騒音や明るさなどの刺激が集中的な職場環境では、集中力や忍耐力の低下を引き起こすことがあります。

障害年金の概要

障害年金とは何か

障害年金は、労働能力が障害により制約された人々に対して支給される社会保障制度の一つです。障害年金は、経済的なサポートを提供するだけでなく、障害者が社会的な参加を促進し、生活の質を向上させる目的を持っています。

障害年金の支給条件と手続き

障害年金の支給条件は、一般的な条件には以下のようなものがあります。

障害の程度:

障害年金を受けるためには、労働能力が障害により制約されていることが必要です。
具体的な障害の程度は、医療機関や専門家による診断や評価に基づいて判断されます。

収入制限:

障害年金の支給には、収入制限が存在する場合があります。一定の所得基準を超える場合には、支給が制限されることがあります。

障害年金の手続きには、必要な書類の提出や医療機関での診断、障害評価の申請などが含まれます。具体的な手続きについては、所在地の社会保障機関や専門家に相談することをおすすめします。

参照:20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等|日本年金機構

障害年金のメリットと利点

障害年金を受けることには、以下のようなメリットと利点があります。

経済的なサポート

障害年金は、労働能力が制約された障害者に対して経済的な支援を提供します。
これにより、生活費や医療費などの経済的な負担を軽減することができます。

社会的な参加の促進

障害年金は、社会的な参加を促進する目的も持っています。
経済的な安定が得られることで、障害者は自己実現や自己成長の機会を追求することができます。

心理的な安心感

障害年金の受給により、障害者は心理的な安心感や自己肯定感を得ることができます。
経済的な安定が保たれることで、より積極的に生活に取り組むことができるでしょう。

広汎性発達障害者にとっての障害年金の役割

上記で述べたように障害年金は広汎性発達障害と診断されたら利用できる制度になります。
詳しく紹介いたします。

経済的なサポートと生活の安定

障害年金は、広汎性発達障害者にとって経済的なサポートと生活の安定を提供します。
仕事での困難さや障害による制約があるため、経済的な負担を軽減することは重要です。
障害年金の受給により、生活費や医療費の負担を減らし、基本的なニーズを満たすことができます。
これにより、広汎性発達障害者は経済的な安定を得ることができ、生活の質を向上させることができます。

心理的な安心感と自己肯定感の向上

障害年金の受給により、広汎性発達障害者は心理的な安心感と自己肯定感を得ることができます。
障害による制約や困難さを抱える中で、経済的な安定が保たれることで、不安や心配事が軽減されます。
また、自己肯定感も向上し自分自身の価値や能力を肯定的に捉えることができます。
これにより、広汎性発達障害者は自己実現や自己成長の機会を追求し精神的な充実感を得ることができます。

仕事との調和を図るための支援制度

障害年金は、広汎性発達障害者が仕事との調和を図るための重要な支援制度です。
障害による制約があるため、通常の労働環境や職務に対応することが難しい場合があります。
しかし、障害年金を受けながら働く方法や具体的な支援制度を活用することで、広汎性発達障害者は自分に合った働き方を見つけることができます。
例えば、パートタイムやフレキシブルな労働形態、職場での合理的配慮の申請などがあります。
これにより、広汎性発達障害者は仕事とのバランスを取りながら充実した生活を送ることができます。

広汎性発達障害者が障害年金を受けながら働く方法

障害年金を受給したら仕事ができなくなると思われがちですが実はそうではありません。

パートタイムやリモートワークなど労働形態の活用しましょう

広汎性発達障害者は、パートタイムやフレキシブルな労働形態を活用することで、仕事との調和を図ることができます。

パートタイム労働

パートタイムの勤務時間は、週の労働時間や勤務日数を調整することで、自身の能力と調和した働き方を実現します。
これにより、負担を軽減し、ストレスを軽減しながら仕事に集中することができます。

フレキシブルな労働形態:

フレックスタイムやリモートワーク、時差出勤などの柔軟な労働形態を活用することで、自分のパフォーマンスが最も高まる環境で働くことができます。
自分のペースや体調に合わせて仕事を調整することができます。

自営業や副業

独立して自営業を行ったり、副業を選択することも考えられます。自分のペースで仕事を進めることができ、自己管理やスケジュール調整がしやすいです

職場に「合理的配慮」を相談しましょう

障害年金を受けながら働く場合、職場での合理的配慮を申請し、実施することが重要です。
合理的配慮とは、障害者が仕事を円滑に遂行するために必要な配慮や調整を行うことです。
以下は、職場での合理的配慮の例です。

労働環境の調整

騒音や明るさの調整、個別の作業スペースの提供、集中力を高めるための対策など、労働環境の調整が含まれます。

コミュニケーションのサポート

コミュニケーションの方法やタイミングの調整、コミュニケーションツールの活用、理解のサポートなど、コミュニケーションのサポートが含まれます。

タスクの調整

タスクの内容や難易度の調整、適切な指示やフィードバックの提供、タスクの優先順位の調整など、仕事の内容やスケジュールの調整が含まれます。

広汎性発達障害者が仕事との調和を図るための具体的な支援制度

支援制度やプログラムを活用することで、広汎性発達障害者は自分に適した職業を見つけ、仕事との調和を図ることができます。
個々の能力や制約に合わせた適切な支援を受けることで、充実した職業生活を実現することができるでしょう。

就労継続支援制度の利用

就労継続支援制度は、広汎性発達障害者が長期的に安定した職業生活を送るための支援を提供する制度です。具体的な支援内容には以下のようなものがあります。

就労継続支援A型事業: 就労継続支援A型事業所では、広汎性発達障害者に対して、適切な職場環境や指導・支援を提供します。個々の能力や特性に合わせた仕事の適性評価やトレーニングを行い、就労の機会を提供します。

就労継続支援B型事業: 就労継続支援B型事業は、広汎性発達障害者が地域の一般的な企業で働くための支援を行います。障害者と企業をマッチングさせ、適切な職場環境の整備や就業支援を提供します。

就労移行支援制度の活用

就労移行支援制度は、広汎性発達障害者が学校や施設から社会へと移行し、就労を実現するための支援を提供する制度です。以下は、就労移行支援制度の活用方法の一例です。

就労移行支援事業所の利用: 就労移行支援事業所では、広汎性発達障害者に対して、職業適性の評価や職業訓練、労働条件の調整などの支援を行います。適切な職業の選択や就業準備のサポートを受けることができます。

インターンシップや実習の参加: 就労移行支援制度を活用して、広汎性発達障害者はインターンシップや実習の機会に参加することができます。これにより、実際の職場での経験やスキルを身につけることができます。

C. 職業リハビリテーションのプログラム

職業リハビリテーションのプログラムは、広汎性発達障害者が職業能力を向上させ、就労を実現するための支援を提供します。以下は、職業リハビリテーションのプログラムの一部です。

職業評価: 職業評価では、広汎性発達障害者の能力や適性を評価し、適切な職業選択の支援を行います。個々の能力や興味を考慮した適性評価が行われます。

職業訓練: 職業訓練では、広汎性発達障害者に対して職業的なスキルや知識を習得する機会を提供します。職場で求められる具体的な業務についてのトレーニングや指導が行われます。

広汎性発達障害者が障害年金と仕事の調和を実現するためのポイント

障害年金を受けながら仕事との調和を図るためには、自己管理やストレス管理の重要性を理解し、適切なサポートを受けることが大切です。
下記のポイントを参考にしていただき、充実した職業生活を実現してもらえればと思います。

自己管理とストレス管理の重要性

仕事との調和を図るためには、自己管理とストレス管理が重要です。以下のヒントを参考にしてください。

自己理解

自分自身の広汎性発達障害の特性や限界を理解しましょう。自分の強みや弱みを把握することで、適切な対策や自己管理方法を見つけることができます。

スケジュール管理

予定やタスクを適切に管理し、時間を上手に使いましょう。計画的に働くことで、仕事とプライベートのバランスを取ることができます。

ストレス解消法

ストレスがたまったときは、適切なストレス解消法を見つけましょう。例えば、趣味やリラックス法、適度な運動など、自分に合った方法を試してみてください。

サポートグループやカウンセリングの活用

障害年金を受けながら働く際には、サポートグループやカウンセリングを活用することも有益です。
以下のアドバイスを参考にしてください。

サポートグループへの参加

同じような経験を持つ他の広汎性発達障害者との交流や情報共有は、大きな支えとなります。
地域のサポートグループやオンラインコミュニティに参加し、助言やサポートを受けることができます。
無料で参加できるあかね会などがございます。

障害年金相談会-あかね会-

カウンセリングの受け入れ

心理的なサポートやカウンセリングを受けることで、自己理解やストレス管理の手助けを受けることができます。専門家のアドバイスや支援を受けることで、仕事との調和を図るための戦略やスキルを身につけることができます。

自分に合った職場環境の見つけ方

広汎性発達障害者にとって適切な職場環境を見つけることは重要です。以下のヒントを参考にしてください。

適性や興味に基づいた職業選択

自分の適性や興味に合った職業を選ぶことで、仕事へのモチベーションや満足度が高まります。自分の得意な分野や関心のある領域を考慮し、適切な職業を見つけましょう。

職場の雰囲気やサポート体制の確認

職場の雰囲気やサポート体制が広汎性発達障害に適しているかどうかを確認しましょう。
柔軟な労働環境や合理的配慮の提供、理解ある同僚や上司の存在などが重要な要素です。

職場訪問や面接での質問

職場訪問や面接時には、自身の広汎性発達障害に関するニーズや要望を伝えることが重要です。
具体的な職場環境やサポート体制について質問し、自分に合った職場を見つけましょう。

広汎性発達障害と診断された場合、障害年金は社労士に依頼できるか?

広汎性発達障害と診断された場合、社労士に依頼することは十分に可能で以下のような支援を受けることができます:

障害年金の申請と手続き

社労士は、障害年金の申請や手続きに関するサポートを提供します。必要な書類の作成や提出方法、申請時の注意点などをアドバイスし、スムーズな手続きをサポートします。

労働条件の調整や合理的配慮の申請

広汎性発達障害者が働く上での困難さや制約がある場合、社労士は雇用主との間で労働条件の調整や合理的配慮の申請を行います。
適切な職場環境や柔軟な労働形態の確保を支援し、広汎性発達障害者が働きやすい環境を実現します。

労働相談や労働トラブルの解決

社労士は労働相談や労働トラブルの解決にも携わります。
広汎性発達障害者が労働条件や雇用に関する問題を抱えた場合、適切なアドバイスや解決策を提供し、問題の解決に向けて支援します。

せたがや障害年金支援センターでは広汎性発達障害向けの障害年金受給サポートをしています。

当社では、広汎性発達障害の方に向けて障害年金受給のサポートを行なっております。
初診日がわからない、申請手続きが面倒など様々な理由で申請をされていない方はぜひご相談ください。

広汎性発達障害で障害年金を受給できた事例

知的障害、てんかん、広汎性発達障害で悩んでいた

広汎性発達障害でよくある質問

広汎性発達障害と障害年金についてよくある質問をご紹介します。

広汎性発達障害の症状は、通常、発達期(一般的に18歳まで)に顕在化します。
しかし、発達障害の場合、症状が存在していても、初めて医療機関を受診した日が初診となることがあります。

広汎性発達障害の方(自閉症スペクトラム症やアスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害など)も、適切な障害認定基準を満たしていれば、通常障害年金の申請が可能です。
ただし、発病日または初診日が不明の場合は、却下または不支給となります。

障害基礎年金の支給額は、障害等級によって異なります。
障害等級1級の場合、年間で97万6,125円、月額では81,343円が支給されます。
同様に、障害等級2級の支給額は年間78万900円で、月額で65,075円です。
ただし、障害等級3級以上の場合は障害基礎年金が支給されないことになります。

この記事を書いた人
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丸橋 俊博

世田谷区でNO.1の実績!豊富な経験で障害年金の申請をサポートをしている社労士です。

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